労働契約では支給の定めがない割増賃金の請求を、労働基準法に基づいて行う場合

月給18万だが残業に一切賃金がつかない契約になっている、というような場合について考えます。
相手が支給する気のないお金を請求するため、紛争突入の可能性が高いケースです。

まず、正しい割増賃金額の算定を行わねばなりません。ここでお金や手間を惜しむと、あとあとダメージが大きくなります。理想的には、ここで計算した額はその後訴訟を起こして維持できる正確さがほしいです。

割増賃金算出については、当事務所の有料労働相談の利用もおすすめします。

未支給の割増賃金額が計算できたなら、この部分はほかの請求と明確にわけて書くようにしてください。労働契約書や就業規則で、労働基準法の規定よりよい条件で割増賃金を計算する規定があるならば、それによっている旨を明示する必要もあります。

最小構成の例
平成24年11月分の給料につき、労働基準法所定の時間外労働割増賃金として、金○○円の支払いを求めます。

と書くのがこのユニットでは必須になります。

この類型で書いておくことを勧めるユニットとして、

推奨構成の例
1.労働契約で割増賃金支給の定めがない、あるいは間違っていることを指摘して (ユニット1)
2.それが労働基準法に違反することを主張して (ユニット2)
3.未払い分を請求する (ユニット3)

という3ユニット構成をとることをおすすめします。一例をあげます。

ユニット1.労働契約の、違法部分の指摘 私が貴社と締結した労働契約では、残業につき割増賃金を支給しない旨の定めがあります。
ユニット2.違法部分の、適用される条文の指摘 これは、労働基準法所定の労働時間を超える労働について割増賃金の支給を義務づけた同法第37条に違反するものです。
ユニット3.割増賃金の請求 よって、平成24年11月分の給料につき、労働基準法所定の時間外労働割増賃金として、金○○円の支払いを求めます。

簡潔ですが、最低限これだけやっておけばOKです。深夜労働や休日労働でも、ユニット1の「残業」の部分を変えてあげれば使えます。

必須のユニットは3.おすすめの標準構成はユニット1〜3.です。複数月にわたって割増賃金未払いがある場合や、時間外・休日・深夜と複数の割増賃金を請求する場合は、ユニット3で各月、および時間外・休日・深夜に分けて書けばよいです。

ユニット3.の例
労働基準法所定の割増賃金として、以下のとおり支払いを求めます。
平成24年11月分 時間外労働につき金○○円 休日労働につき金○○円
平成24年12月分 時間外労働につき金○○円 深夜労働につき金○○円

正確な計算ができない場合

時効が迫っているなどで、割増賃金額の正確な計算をする時間的な余裕がないこともあります。

この場合には、請求する割増賃金の計算期間とその種類(時間外・深夜など)だけを明らかにして催告書を送付しておき、計算ができたら改めて催告書を送付するか訴訟の提起等の措置をとるようおすすめすることがあります。

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Last Updated : 2013-07-09  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.