未払い給料の支払をもとめる場合請求書または催告書

ここでは、『未払いになっている金額』および『給料未払いが発生した賃金計算期間』をあきらかにしておきます。

平成24年11月分の給料18万円の支払を求めます。

以上が、相手に金銭の支払いを請求する一番単純なユニットになります。これが基本です。

これで、平成24年11月に支給されるべき給料18万円について、時効消滅を阻止する催告の効果は発生します。

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賃金が、基本給そのほかの手当に分かれる場合

基本給16万円、皆勤手当1万円、通勤手当1万円、という場合を考えます。

これらの全額が未払いなら、積極的に分けてかく意味はべつにありません。どれも労働契約にもとづいて発生する賃金であることにかわりはありませんから。

ですが、相手に対するお話をわかりやすくするため、あるいは、このうちのある手当の支給をストップされたことで紛争になったような場合は特に書いておいた方がいいでしょう。

平成24年11月分の基本給16万円、皆勤手当1万円、通勤手当1万円の支払を求めます

この例で皆勤手当1万円と通勤手当1万円のみが未払いになっているとします。

ここで『平成24年11月分の給料2万円の支払を求めます』と請求するのは構いません。
ですが、万一まちがえて『基本給1万円、通勤手当1万円の支払を求めます』とすると皆勤手当の請求を落としているばかりか、支払義務のない基本給について請求をしていることになります。注意が必要です。

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賃金が一部支払われており、残りの請求をしたい場合

例として基本給16万円、皆勤手当1万円、通勤手当1万円で、基本給10万円、皆勤手当5千円、通勤手当0万円がすでに支払われた場合を考えます。

なおここでは、会社が一方的に労働条件を変更して賃金を切り下げた場合は考えません。経営不振などを理由にして、支払うべき金額は争わないがとにかく払わない、というケースを考えます。この場合でも、未払いの総額および賃金計算期間を書くことは必須です。

平成24年11月分の基本給6万円、皆勤手当5千円、通勤手当1万円の支払を求めます

平成16年11月分の給料7万5千円の支払を求めますという記載でも、間違いではありません。
未払いが複数月にわたり未払いの額も各月で違う、という場合は分けて書いておくほうが、相手にわかりやすいです。

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相手がくだらない理由をつけて支給カットを強行している場合

法的措置をとるようおすすめすることが大変多いのですが、まず文案を考えましょうか。

強調しておきますが、敵に不払いの意志が明確である場合は○○書士に内容証明など書かせてもムダです。作って送るにしても、自分で書いて経費節減をはかりましょう。

ここでの『くだらない理由』は、たとえば

  • 在職中にした、ささいな失敗について損害賠償請求をし、それと相殺したという主張
  • 同業他社に転職したから支払わないという主張
  • 突然退職したから支払わないという主張
  • 一方的に賃金を切り下げておいて、それが有効に成立したと言い張る主張

など、相手のパーソナリティに応じていろいろ考えられます。

ここで『あなたの主張は意味不明なので、未支給賃金である金○○円の支払いを求めます』と書いてみたい誘惑に駆られる方もいらっしゃいますが、もう少し落ち着いて法律の香りを漂わせておきます。

前項目でのべた、一番単純なユニット構成から2つ、ユニットを追加します。

1.まず簡単に向こうの主張を要約してやって (ユニット1)
2.それが法的に無効であることを主張し (ユニット2)
3.だから未払い賃金を払え (ユニット3 既述)

という構成にします。敵に踏み倒しの意志が見える以上はこっちも落ち着いて戦わねばなりません。まちがっても相手を中傷する文章を作ってはいけません。逆にその不適切な表現を突っ込まれるからです。

労働契約で合意した賃金を支払わないたいていの場合は、法的主張のユニット2は労働基準法第24条第1項違反と言ってしまえば、それで話は済みます。そんなに難しいことではありません。

ユニット1.相手の主張の要約 貴社は私が在職中、事務室の茶碗1個を割ったことをもって損害賠償として金18万円を請求し、それと相殺したとして平成24年11月分の給料金18万円を支払っておりません。
ユニット2.それが法的に無効であることの主張 しかしながら、これは労働基準法第24条第1項に違反するものです。
ユニット3.未払い給料支払いの請求 よって、平成24年11月分の給料18万円の支払を求めます。

こんな感じでつくっていきます。ユニット1.の部分のバリエーションが千変万化なのですが、あとはそんなに変わりません。ユニット1の例をいくつか書いてみましょう。

ユニット1の例
同業他社に転職したから支払わないという主張 貴社は平成24年12月、私が貴社を退職後同業種の○○に就職したことを理由として平成24年11月の給料金18万円の支払を拒絶しております。
突然退職したから支払わないという主張 貴社は平成24年12月、私の退職が労働契約所定の手続きに沿っていないことを理由として平成24年11月の給料金18万円の支払を拒否しています。
一方的に賃金を切り下げておいて、それが有効に成立したと言い張る主張 貴社は平成24年10月、私の給料を一方的に、月36万円から月18万円に切り下げる旨通告しました。

なお、最後の例の賃金の一方的切り下げですが、ユニット2の法的主張として「労働条件の一方的変更は無効であること」を追加しても構いません。

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複数月の未払い給料の支払を求める場合

各月の未払い額を分けて書いた方がよい、ということをのぞいて、1ヶ月分の請求をするときと同じです。

例1
平成24年11月分の給料として、金18万円、平成24年12月分の給料として、金18万5千円の支払を求めます。

このように、どんどんつなげて書いてもよいです。

例2
以下の各月の給料が未払いですので、支払を求めます。
平成24年11月分 金18万円
平成24年12月分 金18万5千円

こうした箇条書きでも構いません。

たまに、『わざとまちがったことを内容証明で書いてみろ。相手によってはその訂正を内容証明で送ってくるから、それを証拠にして訴訟で勝てる』などという本やウェブサイトがあります。

絶対おすすめしません。安易にやってはいけません。

悪用された場合、こちらの法的知識や能力が貧弱であることを非難されます。

自分の主張を正確に構成できないと受け取られて、敵に舐められます。

根拠なく多額の請求を上げた結果敵に弁護士がつき、それがさらに紛争解決を困難にすることもあります。一般人がとるべき選択肢ではありません。

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Last Updated : 2013-07-09  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.