セクハラ・パワハラ裁判では経験された事実ではなく、その記録が勝敗を分けます
持参資料
案件ごとに、大きく異なります資料や痕跡を探すための相談から必要です
- 文書や電子メールによる嫌がらせがなされている場合にはそれらの文書
- 机の上にゴミをばらまく等、ある場所で嫌がらせがなされている場合はその場所の写真
- 加害者の発言を録音した記録と、その内容を文字にしたもの
- その他、加害者の行動を書きだしたメモ
相談機関
加害行為の停止を求めたい場合に一般的な相談先
- 弁護士
- 労働組合(在職者の場合)
セクハラ・パワハラに関する労働相談でも単に一般的な情報提供を受けたいだけなら労基署の相談も利用できますが、あまり意味が無いことに気づかれると思います。
重大な労働災害に至るような事実がないかぎり、労基署はこの問題に強制力をもって関与できません。
現在行われている加害行為を止めさせたい場合に限って相談先を検討すると、代理人として振る舞うこともでき費用面での問題が解決できれば刑事告訴も可能だという点で、弁護士への依頼しか選択肢として残っていないように思えます。加害者に対して代理人として通告書を送ってくれるような関与がないと加害行為の停止は難しいと考えなければなりませんので、現に続いている嫌がらせを止めさせるための労働相談の場合は、とにかく法律相談に行った先で依頼を受けてもらえそうかの見極めが相談の目的になるかもしれません。
退職後の請求のみ、他士業への相談も推奨できます
あっせん申立や民事訴訟など、なんらかの民事上の法的手続きには加害行為そのものを確実にストップさせるほどの影響力はありません。すでに発生した被害について、慰謝料等の金銭を払えと請求できるだけです。
このため、代理人としては民事上の手続きにしか関与できない弁護士以外の士業への相談は推奨できません。対処能力に限界があると割り切っていれば相談可能、という程度です。
理論上は加害行為の停止そのものを要求してあっせん申立や民事訴訟を起こすことも可能ですが、ここでの合意を相手が尊重するかどうかは不明ですので上記のように理解したほうが現実に沿います。
警察への相談にも独自の苦労があるようです
代理人を立てずに警察に相談したり刑事告訴を検討される方もいます。
しかし全治数日間程度の暴行を受けた、あるいはセクハラの態様が強制わいせつと言えるかもしれないといった事案では、被害届を受理させるのに数週間〜数ヶ月かかるという相談事例もあります。被害届を受理されたあとも加害者は処罰されず、事情聴取等で警察署に通った時間が無駄になっただけ、という相談事例も複数把握しています。
現に在職している人の場合のみ、企業側に団体交渉を要求できる労働組合への労働相談が一応推奨できます。
これは法律的にどうこう、という性格の選択肢ではありません。上司なり同僚なりの加害行為を討議の課題として団交要求をかけ、企業に団体交渉に応じる義務を負わせられる立場に立つことで、企業側から加害者である上司等に問題行為の停止を指示させるよう期待する、といった駆け引きの要素が大きいと考えねばなりません。加害者や加害行為そのものに対して、別に何か強制力がある選択肢ではありません。
それに、交渉で解決を目指す以上はある程度人の気持ちがわかって行動力のある組合担当者に出会えないと、せっかく合同労組にはいっても職場で放っておかれて時折思い出したように団交要求をかけてくれるだけ、というような状態になりかねません。
すでに退職した後など、純粋に民事上の損害賠償を請求したいだけ、という場合には、その請求額が140万円以内であれば司法書士への法律相談も可能です。相談はできるというだけで、積極的に推奨する理由はありません。個別によく経験を積んでいる事務所があればそうしたところに相談するのもよい、という程度です。筆者の事務所でこうした案件の裁判書類作成をおこなった事例では、相手から得られた慰謝料が50万円を超えた事例はありません。金額として多いのは10〜20万円です。
どの相談機関を利用するにせよ、労働相談にあたっては嫌がらせ等の問題行動を労働者側で具体的に説明してもらうことが必須になります。訴訟を視野におく場合は、それらの問題行動があったことを自分が立証できるか、つまり記録や痕跡が残っているかが決定的に重要になってきます。いい相談担当者はあなたの相談内容から、証拠の集め方をいろいろと考えて提案してくれるはずです。
証拠や痕跡を初回の相談までに収集できなくても、セクハラ・パワハラの法律相談では特に、加害者が『いつ・どこで・どのように・何をしたのか』を書きだして、相談時にもっていくのがよいでしょう。