登記情報の見方所有権移転登記を自分でするために

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登記情報のかんたんな見方

 ある不動産の登記情報の内容は、土地ならば所在と地番が、建物ならば所在と家屋番号がわかれば誰でもどの不動産のものでも見ることができます。全部事項証明書の取得・法務局での過去の登記簿の閲覧・インターネットでの登記情報提供サービスの利用などが可能です。

 では登記情報として記録されているのはどんなことがらなのか、誰でも手に入れられるサンプルとして登記情報提供サービスの動作確認で表示されるものを見てみることにします。リンク先の『登記情報のサンプル』のリンクをクリックしてください。

 クリック後、pdfファイルとして表示されるのは架空の土地の登記情報です。枠の配置が、大きくつぎの三つに分かれていることがわかります。

表題部
 その不動産の所在や面積(地積)など、権利の登記では変えられない情報が書いてあります。
土地を分筆したり建物を新増改築したりすると表題部の記載が代わったり新設されることになりますが、この登記申請は土地家屋調査士の仕事になります。

表題部にも所有者欄はありますが、甲区欄に記載があればそちらを見てください。つまり、表題部の所有者の記載はほぼ関係ありません。

権利部(甲区)
 その不動産の現在および過去の持ち主、その住所や氏名の変更、仮登記をしたり差押をかけている人、それらの登記申請の目的や登記原因、受付年月日・受付番号に関する情報が書いてあります。
 権利部の登記申請は、司法書士の仕事です。

権利部(乙区)
 不動産が担保に入っていたり(抵当権)登記された賃借権があったり(不動産を借りる権利も登記できます)、送電線や施設を維持する権利(地役権・地上権)など、所有権以外の権利の情報が書かれています。

 見本にはありませんが、記載事項にアンダーラインが引いてあるのはその部分が『抹消された』ということを意味します。
 
 それぞれの箇所から正確に何を読み取るかは専門の文献に譲るとして、不動産を譲り受ける人が何を注意してみればいいかを説明しましょう。

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表題部

 土地であれば地番に注目します。登記申請書や登記原因情報など、不動産登記では所在と地番で物件を示すからです。この二つがわかればインターネットで登記情報を請求することができます。
 公図や地積図を入手できれば、その地番の土地と隣の土地との位置関係が確認できます。その土地が道路に接しているか(建物が建築できるか否か)とか、誰かの土地を突っ切らなければ道路に出られないのか、といった土地と土地とのつながりで利用に制限がある土地かどうかがわかります。

 地目は特に市街化調整区域の土地の取引で問題になってきます。それが宅地でない場合、新たに建物を建てることに制限があるかもしれません。農地である場合には、譲渡や転用に許可申請が必要になります。地目が田や畑である場合には注意が必要です。
 公衆用道路という地目の土地の共有持分(持分は甲区に記載)を持っている、ということもあるでしょう。これは、別の土地にその公衆用道路が接続していて、その持ち分を持っていることに意味がある(他の人と共有している道路状の土地を通路として利用できる)のが普通です。公図などから土地の位置関係をよく調べて、公衆用道路の持ち分とその道路状の土地を通っていける他の土地を同じ人に譲り渡す(譲り受ける)ようにする配慮が必要です。

 建物であれば、所在と家屋番号で物件を示すことができます。このほか、増築を経ているが登記はしていない場合には市町村で取れる評価証明書に書いてある床面積と登記情報に記録されている床面積とが違うことがあります。時として違法であることを承知して増築されていることもありますので、現地調査と併せて登記情報と現状に違いがないかを確認することが重要です。リフォームでローンを利用する場合に、リフォームの計画図面に記載されている床面積と登記されている床面積に相違があるために融資が通らない(その建物に担保が設定できない)ということもあり、この場合は土地家屋調査士に依頼して表題部の変更の登記をする必要が出てきます。

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甲区欄

 見本では現在の所有者は法務太郎(甲区2番の所有者)になっています。この人は売買を原因とする登記で所有権移転をうけたこと、その日付、所有者の住所(あくまでも、当時の住所)が読み取れます。

 このように、100%の持ち分を持っている人から100%の持ち分を譲り受けた場合には記載がシンプル(だいたい、一番下の欄で所有権移転登記を受けた人が現在の所有者)になりますが、複数回にわたって持分を取得した場合は、そのたびごとに甲区欄に登記がなされます。
 この場合には、取得した持分が権利者その他の事項欄に記載されます。ある不動産の持分全部を譲り受けるときには、この欄に記載されている持分を全部拾っていって合計が100%(2分の2とか、5分の5)になるだけの持ち主と登記を特定しておいてください。

 不動産を譲り渡す人(現在の持ち主)が特定できたら、その人の住所として権利者その他の事項欄に記載されている住所と印鑑証明書記載の住所が一致するか、必ず確認しておきます。
 一致していない場合は、所有権移転登記の前に登記のほうを書き換える(所有権登記名義人住所変更登記をする)必要があります。ここを失敗すると所有権移転の登記申請そのものが破綻するため、特に注意して確認しましょう。相続で登記をする場合には、所有権登記名義人住所変更登記をする必要はありません。

 差押・仮差押といった語句が甲区欄に出ているときには、その内容について法務局なり司法書士の相談を受ける必要が高まります。差押は強制執行や抵当権に基づく競売の開始、公租公課の滞納による滞納処分(税金等を取り立てるために不動産を差し押さえて競売にかける手続きと考えてください)が申し立てられたことによってなされる登記です。仮差押は、今の不動産の持ち主が何らか民事上の紛争を抱えており、その人が債務を負っている側であることを示します。

 これらの登記が抹消されない限り、というよりこれらの登記がなされる元になった申立が取り下げ等で終了しないかぎり、この不動産を取得して登記しても後になって差押や仮差押が優先し、権利を奪われることになりかねません。

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乙区欄

 一般的に見かけるのは、見本欄のように『抵当権設定』の登記がなされている物件です。
これは不動産を担保に入れてお金を借りている状態を示すものですので、この不動産を譲り受ける時点でこの登記が抹消されるか、または住宅ローンも引き継ぐなどの調整をしたうえで不動産を譲り受ける計画を立てる必要があります。

 乙区に載るのはほとんどが不動産の価値を落としたり利用に制限を加えたりする権利の登記ですので、抹消されていないものについては『抹消される予定があるか』ないなら『なぜ登記されている、どんな権利なのか』を現在の持ち主からよく聞いておいてください。法務局の登記相談等で乙区の記載を読み解いてもらうのもよいでしょう。

 このコンテンツでは触れませんが、ある不動産を賃借した人が、賃貸する人と合意できればその権利があることを登記できます。その場合には賃借権は乙区に登記されます。純粋に賃借人の権利を守るために登記されている場合もありますし、賃借する権利そのものを売買するとか、その不動産の価値を落とすために登記されることもあります。

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参考文献

この他の参考文献

不動産登記の本人申請に関するもの

売買など、契約に関するもの

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