売買による所有権移転登記を自分でするために不動産業者が関わらないもの
不動産名義変更の手続を自分で『名義を変える』ということは…?
- 土地や家の名義変更の話の前に(登記原因はなんですか?)
- 知っている人から世間相場なみの値段で売ってもらう(売買)
- 他の負担や出費と引き替えの不動産譲渡(売買・負担付贈与・代物弁済)
- タダで譲ってあげる・譲ってもらう(贈与)
- 離婚後の夫婦による、土地建物の名義変更(財産分与)
- 土地建物の持ち主による相続対策(売買・贈与など)
- 知っている(あるいは、知らない)誰かが亡くなった(相続)
- 登記の準備(生きている人から不動産を譲り受ける場合)
知人との不動産売買の相談・名義変更の費用名古屋市緑区〜近県
- 所有権移転登記申請・売買契約書作成の費用
- 登記相談(所有権移転登記を自分でする人向け)
知っている人から世間相場なみの値段で売ってもらう(売買)
売買による所有権移転登記
土地や建物を不動産業者を介さずに個人で購入する・売却する場合は、『売買』を登記原因とする所有権移転登記を行うことになります。
登記申請書や添付書類の書式は法務局ウェブサイトの『4)所有権移転(売買)登記申請書』にあるものが一般的です。
売り主と買い主との協力はできそうですか?手続きを自分たちでするために
売買による所有権移転登記は、生きている個人の間の不動産名義変更手続きとして一番典型的な類型です。
親族や協力的な知りあいとの間で土地建物を売買するなら、不動産業者も司法書士も使わず自分たちだけで所有権移転登記申請の手続きを終えることもできます。
その不動産、ほんとうに売却して(購入して)いいですか?自分で登記をする前に
しかし、さしあたっての名義変更以外に何も考えずに手続きを強行すると、あとで不動産取得税や譲渡所得税など、意外な出費を強いられることもあります。このコンテンツでは売買による所有権移転登記申請の必要書類・書式や費用のほか、売買以外の選択肢も検討します。
他人との不動産売買で登記の本人申請は無理です銀行さんも相手にしません
不動産を売却する側に立って考えれば明らかです。
赤の他人の、しかも素人(失礼ながら、あなたのことです)に印鑑証明書や委任状、権利書を預けたい売り主なんかいません。もしいたら、その売り主の財産管理能力には欠陥があります。
これらの書類は買主からすれば所有権移転登記の必要書類に過ぎませんが、印鑑証明書と委任状を悪用すれば他にも不正ができてしまいます。
住宅の購入資金を住宅ローンで準備し、所有権移転登記と同時に抵当権設定登記が必要なら、自分で行う登記申請への理解はさらに得にくいのが一般的です。
自分で抵当権設定登記申請ができるかどうかは関係ありません。
『オレは自分で抵当権設定登記ができるから、やらせてくれ』
という債務者を信じるメリットがある債権者がいないのです。
インターネットで書式を調べる前に融資担当者に真っ正面から聞いてみたらよいでしょう。
抵当権設定登記後に融資を行うごく一部の金融機関を除いて、やんわりと、そして即時に断られます。
住宅購入時に住宅ローンの利用、つまり抵当権設定登記の連件申請を伴う所有権移転登記の手続きや、不動産業者を介して他人から不動産を購入する場合に登記を本人申請できる可能性についてはこのコンテンツでは考えません。親類や知り合いとのあいだで土地やマンションの売買を行い、代金は現金で決済できる場合を想定しています。
具体的には、相続で得た土地を親類に売却する・たまたま空き家をもっている知り合いから建物を購入して名義を変える、そんな場合です。
とはいえ、筆者は不動産業者の立場をあまり重視しているわけではありません。売り主・買い主・物件が決まっていて売買代金を現金決済する(住宅ローンを使わない)個人売買の場合、不動産業者が関与しないから困る・苦労するということはあまり見かけません。一方で、不動産業者が仲介しても駄目な物件をつかまされる買い主には定期的に出会えます。
筆者は住宅売買について、不動産業者よりは中古住宅の検査に取り組む建築士に依頼費用を出したほうがよほど安心して物件を入手できると考えます。
司法書士への依頼費用はカットしても検査費用は増額せよ、と住宅売買の相談時には買い主に助言しています。
売買による不動産名義変更の流れ売買による所有権移転登記 買主側
1.『その物』を買っていいか・買ってどうするか物件と使用目的の確認
不動産業者が入らない売買では、現地に行き土地建物の状態を確認するのはあなたの仕事です。
その不動産の現状が、購入後に想定している使い道・目的に合いそうか考えてみてください。
マンションでは物件の現況のほか、管理体制や修繕積立金の状況も確認したいところです。
2.『その人』から『その価格で』買っていいか持ち主と価格の確認
物件を売却すると言ってきた人は、その不動産の持ち主本人でしょうか?
不動産の登記情報で、登記上の所有者は確認できます。必ず本人に会いましょう。
建物が未登記のときは契約時までに対応を考えます。
可能なら、相手の言う売却価格と周辺地域の取引事例も比べてみましょう。
実費はいくらかかるのか
登記の費用だけ調べてはいませんか?
買主側では購入後の不動産取得税が無視できません。売主に譲渡所得税がかかることもあります。
それを避けるために、賃貸借など別の方法を検討することもあります。
3.契約条件はどうするか
売却代金の支払いや物件・必要書類の引き渡し時期は当然として、ほかにも売主と買主が協議すれば決められることはたくさんあります。
インターネットで法律を調べるより、相手の意向をよく聞いたほうが話が早いかもしれません。
売主有利にするのも買主有利にするのも、皆さん方次第です。
お互いが納得して売買契約書にすればいいのです。
4.必要書類の作成・準備・登記申請
上記の作業で、物件を購入・売却する時期や条件が決まってきます。
売買契約書や登記申請書など必要書類の見本を探すのはこの段階からです。
売買による所有権移転の登記申請そのものは、売買契約書の作成や代金の支払い・物件引き渡し(入居)の後になってもかまいません。売主の印鑑証明書に有効期限があることだけ注意して、登記申請の準備をしてください。
登記申請そのものは、1〜2週間で終わります。
これで不動産の名義が買い主に変わります。
売主・買主の納税
所有権移転登記後に、買主には不動産取得税の納付の連絡がやってきます。
売主には譲渡所得税の申告の義務が生じます。資金の準備が必要かもしれません。
所有権移転登記の必要書類(売買)土地や家の個人売買による不動産名義変更
不動産を売り渡す人
- 登記済証または登記識別情報(権利書)
- 印鑑証明書
- 実印を押した委任状
- 売却する不動産の固定資産税の評価証明書
法務局によっては評価証明書は不要です
不動産を買い受ける人
売主・買主共同で用意するもの
上記のうち、売買による登記申請で注意することを説明していきます。
売買契約書は「必要書類」ではありませんあれば理想的ですが…
売買等で不動産の名義を変える場合には、所有権移転登記申請の手続きに「登記原因証明情報」の添付が必要です。
しかし、売買等の「契約書」が絶対に必要というわけではありません。
知り合い相互間の不動産売買でも、売買契約書を作れば代金額相応の収入印紙を貼らねばなりません。これは契約書に書いた売買価格によって異なります。
たとえば売買代金が500万円を超え1000万円以下なら5千円、1000万円を超え5000万円以下なら1万円です。一方で、金額の記載がない売買契約書なら印紙額は200円でよいことになっています。(平成26年4月1日現在)
法務省のウェブサイトで登記申請に添付する売買契約書のサンプルを見ると、売買金額を正直に書いて収入印紙を貼る、という作りになっています。
市販の売買契約書の書式も同じです。
→素直に相応の印紙代を納めてよ、ということでしょうかね?
そうすると、売買契約書を作らなければ収入印紙を貼る必要もないではないか、と考える人も出てきます。信頼できる人相互間の不動産売買なら(または、自分がどれだけ損してもかまわないなら)、売買契約書を作らずに不動産を売買することもかまいません。繰り返しますが、不動産の売買においても必ず不動産売買契約書を作らなければならないわけではないのです。
売買契約書を作らない場合は、登記申請のためだけに登記原因証明情報を別個に作らねばなりません。『登記原因証明情報 売買』で検索すればサンプルはたくさん出てきます。
ここで作成する登記原因証明情報は法務局に提出される(登記申請後に帰ってこない)添付書類なので、契約書ではなく印紙を貼る必要もありません。言い方を変えると、売買契約の内容を表す書類が売り主・買い主の手元に残らないままでも売買による所有権移転登記は可能だ、ということになります。もちろん、売主と買主の口約束で売買契約は成立しています。単にその内容が書面になっていないだけです。
売買代金の領収書
売買契約書を作らずに登記申請を済ませる場合、手元に残せる他の書類で買い主の権利を守るためには領収書に「売買代金の全額」であることを明示して売り主から交付してもらうよう注意してください。
契約書がないため売買代金額を明らかにする書類がほかに存在しなくなるためです。
売買契約における買い主最大の義務である「代金をちゃんと払った」ことが上記のように明らかにできるなら、売り主側はどうしたらいいでしょうか?売り主から買い主に不動産の名義を変えたことだけは所有権移転登記が終われば証明できますが、他に売り主の立場を守りたいなら売買契約書の作成が必要です。
売買金額を記載せず、他の取り決めを記載する契約書
不動産登記の必要書類作成とは別の目的があって売り主と買い主の合意の内容を残しておく、という場合には、もちろん売買契約書を作ったほうがいいに決まっています。
以下は住宅や宅地の売買契約書を作成する過程で、売り主と買い主が自由に決めておけることです。
- 一年の途中で不動産を売り渡す場合の固定資産税の負担
- 土地・土地付住宅の場合、土地の実際の面積が登記上の面積と違うときの扱い
- マンションの場合、修繕積立金や管理費の未払い有無・権利の引き継ぎ
- 借地上の建物を売買する場合、地主との関係の引き継ぎ
- 建物据え付けの設備が壊れていた場合の売り主の責任
- 建物内や敷地上に残っている動産の処分
- 転売禁止・買い主死亡時の対策
売り渡す不動産の状況によって売り主と買い主がはっきりさせておいたほうがいいことは、他にもいろいろあります。ウェブサイトにそうした情報はあまり出回っていません。どれだけ不都合なことが起きても受け入れる覚悟がある、というのでもないかぎり、売買契約書を全く作成しないということは制度上可能であってもおすすめできないと考えます。
未登記の(登記のない)建物を買う場合
買いたい土地のうえに建っている建物に、登記がされていないこともあります。
この場合、先に売主が建物の登記(建物表題登記と所有権保存登記)を終えたうえで引き渡してもらうこともできるし、未登記のまま建物を買い未登記のまま保有を続けることも一応できます。
この場合のみ、売買契約書を作成する必要がほかより高いことになります。その建物を誰から買って今は誰が持ち主か、を示す公的な制度(不動産登記)を利用しないことになるからです。
売主がその建物を所有しているかどうかを確かめることも少し難しい面がありますので、未登記の建物を含む不動産を買いたい場合、その建物や敷地に関して売主が税金や火災保険料を払っているか・普段住んでいるか・売主が発注して建てたのか親から相続したのか(そして、それらの証拠)・売主の家族の説明と売主本人の説明が一致するか、などを一通り確認しておくことも必要です。
そうした作業への協力が得られないようなら、売り主側で所有権保存の登記までしてもらい、買い主には所有権移転登記を経て建物の名義を変えるように契約条件を調整することをおすすめします。
売買による所有権移転登記の申請書式・必要書類の見本
標準的な書式
法務省ウェブサイトで「4.所有権移転(売買)登記申請書」が入手できます。
登記の必要書類として所有権移転登記申請書・売買契約書・登記原因証明情報・委任状が含まれていますが土地付き一戸建ての売買を想定しているため、マンションの不動産の表示の記載は別に参照する必要があります。
マンション(敷地権付き区分建物)の不動産の表示の記載は、「14.登記名義人住所・氏名変更登記申請書」を参照することができます。
敷地権化されていないマンションの参考書式は同ウェブサイトにはありません。
法務局提供の書式には売買契約書と登記原因証明情報が含まれていますが、所有権移転登記の申請にはいずれか一方を添付すればよいと考えてください。売買契約書を作った場合でも、売買契約書を登記申請書に添付せずに別に作った同内容の登記原因証明情報を添付して、所有権移転登記の申請をすることができます。
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登記の手続きに必要な費用
登録免許税土地1.5% 建物2%
売買を原因とする所有権移転登記の場合、通常の税率は
- 固定資産税の評価証明書記載の価格×2%(土地の場合、平成31年3月まで1.5%)
です。
価格1000万円の建物なら20万円、価格500万円の建物と1000万円の土地について同時に所有権移転登記を行う場合は25万円となります。
この料率によらない場合
次の場合、不動産価格や登録免許税額は上記の方法で計算しません。事前に登記相談を要します。
- 住宅用家屋証明書の交付を受けられる場合
- 敷地権が地上権・賃借権であるマンションの敷地権部分
- 公衆用道路・保安林など非課税の土地
チェックリスト知り合いとの不動産売買・買い主側
売買契約のまえに 1目に見える状況について
- 売買する不動産の現地現物、備品の機能は確認したか
- 土地の境界は明らかか。隣の人との争いはないか
- 敷地・建物内にある動産は誰のものか。買い主が処分してよいか
- 未登記の別の建物や増築部分はないか。ある場合、売り主のものか
売買契約のまえに 2法律や契約について
- 代金・必要書類・鍵の引き渡しはいつどのように行うか
- 売り主の譲渡所得税額は試算したか
- 買い主の不動産取得税額は試算したか
- 登記にかかる登録免許税は試算したか
- 売買の年の固定資産税は売り主・買い主どちらが負担するか
- 土地の場合、実際の面積が登記と異なっていた場合はどうするか
- 建物の場合、登記されていない別の建物や増改築部分は売ってもらえるのか
- マンションの場合、修繕積立金に滞納はないか。費用負担を要する修繕計画はないか
- 現在の登記の状況はどうなっているか。抵当権や賃借権など不利な登記はないか
- 土地の場合、公図や地積測量図を確認したか。公図上で道路に接続しているか
- 土地の実測面積が登記情報記載の面積と一致しない可能性を承知しているか
- 売り主が持っている権利書(登記済証)や登記識別情報記載の受付番号・受付日は、不動産の登記情報に記載の受付番号・日付と一致しているか
- 売り主が複数回に分けて不動産の持分を取得していた場合、その回数ぶんの権利証等を確認したか
- 過去の抵当権・仮登記などが抹消されずに残っていないか
- その物件をいま、その代金で買ってよいのか。
贈与や賃貸借など別の方法を検討したか。
売買契約のときに売り主・買い主について
- 売買契約書に上記の取り決めは盛り込まれているか
- 売り主全員と直接会って物件売却の意思があることを確認したか
- 売り主が押した実印の印影は鮮明か。印鑑証明書と一致しているか
- 売り主が書いた住所氏名は印鑑証明書と一致しているか
- 売り主が共有者である場合、誰にいくらお金を渡すのか
- 代金を渡した人から領収書をもらったり、振込記録を残したか
- 代金と引き替えに登記に必要な書類を渡される場合、全ての書類が揃っているか
- 最新の不動産の登記情報に記載されている売り主の住所氏名は、印鑑証明書に記載のものと一致しているか
不一致の場合は所有権登記名義人住所(氏名)変更登記申請が必要です
登記申請のまえに登記申請書と添付書類について
- 共有者がいる・共有持分を買うのに登記の目的を「所有権移転」としていないか
- 登記原因の日付は、売買契約書または登記原因証明情報の記載と一致しているか
- 権利者の記載は住民票記載の住所氏名と一致しているか
- 共有持分を買い受ける場合、権利者の持分を記載したか
- 義務者の記載は印鑑証明書記載の住所氏名と一致しているか
- 登記申請の管轄法務局を、法務局のウェブサイトで確認したか
- 課税価格は1000円未満を切り捨てたか
- 登録免許税額は100円未満を切り捨てたか
- 住宅用家屋として、所有権移転登記の登録免許税率の軽減(租税特別措置法第73条)を受けられるか
- 登記申請書に記載の不動産の表示は、各不動産の登記情報と比べて間違いないか
- 登記申請書2ページ目に収入印紙を貼る場合、1ページ目と2ページ目に契印をしたか
- 登記申請書・委任状・登記原因証明情報(または契約書)に記載の権利者・義務者の住所氏名は全て一致しているか。誤字はないか。
- 登記申請書・委任状・登記原因証明情報(または契約書)に記載の不動産の表示は全て一致しているか
- 委任状・登記原因証明情報(または契約書)には売り主全員の実印が押してあるか
- 委任状の日付は、登記原因の日付と同じか後の日付になっているか
- 売り主全員の印鑑証明書は、登記申請の時点で発行日から3ヶ月以内のものであるか
- 住民票・評価証明書・売買契約書は原本還付を受けるか。その場合、原本証明をおこなったか。
気になることがありましたら、当事務所の登記相談をご利用ください。
参考文献売買による不動産名義変更
小さな事務所からの、相談のご提案
気になることをゆっくり話せるように、2時間の相談時間をとりました。
日曜日や夜間でも大丈夫です。ご自宅にお伺いしたり、県外への出張相談も。
不動産登記だけでなく、契約書作成・保険や年金・裁判手続のことにもお答えします。
相談は有料ですが、その後のメールでのお問い合わせには無料で対応しています。
本職1人・アシスタント1人の小さな事務所ですが、14年の経験があります。
大事務所と違って担当者の異動はありません。末永くお使いいただけます。
こんなときに、ご利用ください
- 契約書の見本にないことを定めたい
- 相手が離れたところに住んでいる
- 登記申請書の添削をしてほしい
- 遠くにある土地建物を調べたい
- 費用面で有利な方法を探したい
- 調停・訴訟など裁判手続を使いたい
こんなことができます
- お客さまに合った契約書を作ります
- 遠くの方には、出張して手続します
- 作った書類のチェックもお受けします
- 法務局や現地の調査をしたり、ご案内します
- 仮登記・賃借権や信託など別の案も考えます
- 公正証書や裁判所に提出する書類も作ります