相続対策による所有権移転登記を自分でするために
目次 『名義を変える』ということは…?
- 土地や家の名義変更の話の前に(登記原因はなんですか?)
- 知っている人から世間相場なみの値段で売ってもらう(売買)
- 他の負担や出費と引き替えの不動産譲渡(売買・負担付贈与・代物弁済)
- タダで譲ってあげる・譲ってもらう(贈与)
- 離婚後の夫婦による、土地建物の名義変更(財産分与)
- 土地建物の持ち主による相続対策(売買・贈与など)
- 知っている(あるいは、知らない)誰かが亡くなった(相続)
- 登記の準備(生きている人から不動産を譲り受ける場合)
親族との不動産売買・生前贈与の相談・名義変更の費用名古屋市緑区の司法書士です
自分が生きているうちに、亡くなった後の対策をととのえる
誰かの死亡に備えて、死亡する人の相続人になる人やその関係者が準備するのもこれに当たるかもしれません。いわゆる相続対策でおこなう、財産の移動です。
一口に相続対策と言いますが関心の方向は、二つに分かれるようです。
税金への対策
第一に、相続『税』対策です。ある程度まとまった(数千万円〜1億円程度以上の)資産を持っている人が相続税の軽減を目指して行うものです。
基本的には税理士さんやコンサルタント・建築業者を使えばいい人たちなので、本コンテンツでは以後触れません。
紛争への対策
第二に、相続『紛争』対策とでもいうべきもの。財産の多少に関係なく、複数の相続人がいて相続で争いが発生しそうな場合に、これを避けるために立案されるものです。相続をめぐって、遺産の配分に被相続人、つまり今の不動産の持ち主の意思を反映させる対策もこれに含まれます。
相続紛争は遺産の額にかかわらず発生します。具体的には、預金100万円と売却価格1000万円の家を残して親が死亡し、子供(長男・長女)二名が相続人になったが、家は長男が住み続けたい、という場合はどうでしょう。
不動産は売ってしまえば長男が住むことができず、かといって預金は100万円しかないので長男が家を、長女が預金を相続したら遺産分割協議としては必ず不平等になるのですが、こうした相続紛争は今後増加すると筆者は考えています。
この対策を考えるためにまずしなければならないことは、相続人が誰であるかを調べて確定することです。特に離婚歴があったり認知した子供がいるような場合には、相続人のなかに他人に近い人が混ざってしまうことがあります。そうまで行かないにしても、
- 相続人になる人は、誰なのか
- その人たち相互の関係はどうか
- 相続人になる人の関係者(特に配偶者)はどういう人か。相続人に代わって強硬に権利主張してくるようなことはないか
これらを冷静に評価する必要があるでしょう。兄弟やその家族がみな仲良しで、長男がすべてを相続して何の問題もないという線で一致団結しているというのであれば特に相続対策の必要はない、ということになります。これも、よくある話です。
そうした評価の結果、相続で争いになることが考えられるほど『生きているうちに、財産の名義そのものを変えておく・あらかじめ贈与したり売却しておく』必要が高まってきます。相続で争いにはならなくても、どの財産を誰に引き継がせたいかの意向を確実に反映させるために『生きているうちに、譲ってしまう』というのも一つの方法です。
不動産の相続紛争対策
不動産については、相続による紛争を避けるために次の方法が考えられます。
売買あるいは贈与によって、譲りたい人に本当に譲ってしまう・賃借権を設定する
当たり前ですが、誰かに自分の財産を持たせたい、という目的においてもっとも確実性が高いのはこれ(実際に譲ってしまうこと)です。ただし、実費が下記の選択肢より高額です。
また、財産を譲られた人が勝手に転売してしまうとか、関係が悪化してしまった場合にその財産を取り戻す、ということが難しくなります。売買であれば買戻特約を登記しておくことで一応の対処ができるかもしれません。
相続人の一人に不動産を相続させる必要はなく、その人が不動産を使い続けることができればよい、というだけならば、賃借権を設定して登記しておくということも考えられるでしょう。方針が決まれば、あとは一般の売買なり贈与と同様に準備して必要な登記申請手続きを行うことになります。
譲りたい不動産について、書面で死因贈与契約を結んだうえ所有権移転請求権仮登記をしておく
死因贈与契約というのは、贈与する人が死亡した時に効力が発生する贈与契約の一種です。
死因贈与契約は、贈与ではありますが贈与税の課税を受けない点に一つの利点があります。ある不動産の持ち主について、老後の面倒を持ち主の死亡までみるかわりに、その人が死んだら不動産を譲ってもらう、というありがちな合意にも馴染むでしょう。
単に遺言で遺産分割方法を指定したり死因贈与契約を結んだだけだと、贈与者から後で取り消される危険性がありますので、仮登記を経ておくことを推奨します。仮登記によって権利を保全できるのが、遺言による遺産分割方法の指定に対して死因贈与契約が優れている点です。
ただし、遺言と同様に遺留分減殺請求の対象になりますので、気に入った一人の相続人に財産の大部分を譲りたい、というような意思は実現されない可能性が高まります。
遺言を書いて遺産の分割方法や不動産を相続する人を指定しておく
もっとも簡単で費用もかかりませんが、もっとも脆弱なやりかたです。
遺言それ自体が何度もやりなおし可能ですし、遺留分の制度があるためあまり不平等な遺産分割方法を指定することも推奨できません。また、すべての相続人が合意してしまえば遺言の内容と異なる遺産分割方法を採ることも可能ですので、たとえ公正証書遺言を書いてもそれが確実に実行されるわけではありません。
持ち主の意思に沿うために、生前対策することの必要性
以上のことから、死亡する人(被相続人)が希望する相続財産の配分をおこなった結果が誰かの遺留分を侵害するようなときには、遺留分減殺請求を受けるかどうかはさておいて相続前に財産を手放してしまうことも考えなければならないということができます。
上記のほかに、信託契約によって第三者に不動産その他の財産の管理・活用・売却を任せ、受益権を相続人に持たせることも可能です。法律的にはもっとも確実に被相続人の意思を反映させられますが、信託業者に依頼すれば信託報酬がかかることやしくみが複雑(というより、考えなければならないことが多い)ため、ここでは触れません。
参考文献
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