お客をあおるウェブサイト『残業代請求は労働者の権利だ』…確かにそうですが
はやく連絡してください。あなたを救いたいのです!
筆者がみていた過払い金返還請求大好きな事務所では、こんな安っぽいキャッチフレーズを使っていました。
自分は多重債務で苦しんでいる被害者だ、と信じたい人をひっかけるには、いいかもしれません。
労働紛争なら、景気よくお客を誘うウェブサイトにはこんな言葉が並んでいるでしょうか。
- あなたには残業代の請求をする権利があります!
- 不当解雇(賃金未払い)許しません!徹底的に闘います!
- 無料労働相談受付中!何度でも無料・出張も無料で対応!
こうしてお客をあおってみるのも一般的な手法です。丁寧に淡々と仕事する人なら、恥ずかしくてなかなか口にできません。
小さな会社を相手にする労働紛争の場合、会社側はその会社を倒産させるか休眠させてしまえばその請求から逃げ切れる(よほど要領が悪くなければ、労働者から経営者個人への責任追及は弁護士がやっても失敗させることができる)ため、労働者に権利があると言ったって、実際にできることには限界があるのです。
そうした限界に言及しないまま、労働者側の権利意識や被害者意識だけを刺激して依頼を誘うのは誠実ではありません。
もう少し穏やかな表現で誘うのは、一般的なマーケティング手法です。
- 当事務所をお勧めできる三つの理由(五つの約束、でもかまいません)
- お客さまから感謝の声が続々寄せられています
- 当事務所の解決事例
こうしたものを見せるのは、士業のウェブサイト作りの教科書に載ってる基本だと思ってください。本当にそうした実績やサービスがあるかどうかはわからないのです。
依頼終了時に依頼人から感想を手書きさせて送付させるのを必須にしているくせに、それを(自発的な)感謝の声として片っ端からウェブに晒すのはどうかと思えますが、頼んで書かせたことは黙っていればわからないでしょう。
お客さまの声は手書きで書かせろ、というのもマーケティングのテクニックとして存在しているのです。
これらは労働紛争に限ったものではありませんし、落ちついてウェブサイトをみていればわかるはずの手法ですので引っかかる労働者が悪い、と筆者は考えます。
筆者の事務所ではお客さまに感謝の声を出させて集客につなげるようなあざとい真似はしていないので、ブログにごくたまにコメントがあるくらいです。
まして手書きのメッセージなどいただいたことは、創業以来15年で…まだ、片手で数えられるでしょうか。そういうものは大事にしまっておけばそれでよく、他人に見せびらかすものではないと考えています。