めんどうなこと、やりませんまたは、費用を高くします
儲からないこともしません、と付け加えてもいいでしょう。
一般的な依頼類型から少しでも外れるようなら依頼を受けない、というのはよくあることです。
タイムカードがなければ残業代請求の依頼を受けない、他の証拠を探すのはめんどくさい、というのはあり得ます。
面倒なことはしないというところまでいかなくても、報酬が高いというのはまさに一般的です。
労働紛争に関して弁護士の事務所が出している報酬体系をみていると、
- 裁判外で行う交渉より労働審判手続きのほうが高い
- 労働審判手続きより通常訴訟のほうが高い
- または、通常訴訟に関する費用の説明がない
そうした事務所が目に付きます。筆者がかつて過払い金バブルに踊っていた他の司法書士を見ていたときには、その事務所では
- 残債務が残る依頼は受けない
- 訴訟なんかおこさない
- 全部、裁判外での和解で済ませる
- そのために、業者に請求できる過払い金の額を業者側が言うように減額する
そうした方針を平然ととっていることにあきれたものです。
商売熱心な士業がこれとおなじ同じような処理方針をとることは、残業代の請求でも可能だということに気をつけてください。無料労働相談を経てこころよく依頼を受けてくれた自称専門家に代理してもらっているからと安心しているうちに、なにやら妙な理屈で請求額の一部しか支払われないことになりました、という報告がくるかもしれません。
こうした執務の方針はその事務所の報酬設定をよく見ると推測できることがあるものの、ウェブサイトからはなかなか読み取れないため注意が必要です。依頼人の意向を無視して裁判外での和解や労働審判のみを推奨し続けるようであれば、その弁護士は面倒な依頼を受けたくない可能性も考えてみましょう。
ここまであからさまな事務所運営でなくても、「儲からないことはしない」というのは弁護士に依頼しようとするとき特に直面させられる限界と考えねばなりません。弁護士業界ではむしろ一般的なのですが、依頼の際に支払う着手金を最低10万円としている事務所があります。これは事実上、請求額10万円台までの未払い賃金の請求の依頼をあきらめさせる効果をもっています。
最近では残業代請求について、成功報酬の最低額を20〜30万円とする事務所も出てきました。こちらは30万円に満たない請求の依頼を抑止するでしょう。
これらは問題事例というより業界内での一般的あるいは正当な報酬設定なので、ご自分で裁判手続きを進められるよう研究するか、他にもう少しましな事務所に会えるよう探し続けるしかないと思います。