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法廷内にいる人

期日が開かれている法廷内には、傍聴人のほかにもいろいろな人がいます。傍聴席を基準にした位置と格好から見分けられます。

裁判官(正面高いところの真ん中にいる人)

傍聴席正面の一段高いところ(法壇)にいて、黒い法服を羽織っています。地方裁判所では、一人であることも三人であることもあります。ラウンドテーブルの法廷だと法壇はないので、ラウンドテーブルの一番奥に座っています。この場合、裁判官は法服を着用しません。

裁判官でないが法壇の上にいる人たち

裁判官と同じ高さで裁判官の両脇にいるけれど、実は裁判官ではない人もいます。

司法修習生

地方裁判所だと、司法修習生が背広姿で座っています。大抵は若い人です。法服を着ていませんのでわかりますし、司法修習生という名札を立てています。

司法委員

簡易裁判所の場合、お年を召した人が背広でいることがあります。これは司法委員といって、裁判所が業務を委嘱した民間人(非常勤の公務員)です。和解の際に当事者から詳しく事情を聞くことが彼らの主な役目です。

書記官(正面で当事者と同じ高さの席にいる人)

この人も黒い法服を着ています。ラウンドテーブルの法廷では背広姿でいることは、裁判官と同じです。開廷前から準備をしたり期日において事件番号を読み上げたり(これらは廷吏のいない場合)期日の内容を記録するほか、期日と期日のあいだに当事者から書類を授受したり問い合わせに答えたりするのが役目でして、本人訴訟においてはある意味で裁判官より仲よくしたい裁判所の重要人物、といえましょう。

廷吏(書記官の脇、左か右の隅にいる人)

法廷によっては廷吏という人がいます。この人は、出頭カード(出頭した当事者が名前を書く紙)をとりまとめたり当事者が出頭しているか探して回ったりして期日の進行を補助するのが主な仕事です。法服は着ていません。

速記者(尋問の際に、書記官の隣にいる人)

地方裁判所での当事者尋問や証人尋問のときに、速記を行う人です。たいていは女性です。

尋問における発言の内容を速記で記録に残すのが仕事ですが、彼女らも人間なので証言者や尋問者がわかりにくく話すと少し顔をしかめたり首をかしげたりします。本人訴訟のヘタな尋問ではわりと反応がわかりやすく出てきますので、反面教師として観察してみるのがよいでしょう。この人達が困る尋問は、ほぼ失敗しています。

原告またはその代理人(左側の席にいる人)

傍聴席から見て左側の席に座っています。原告は裁判を起こした人、つまり賃金請求訴訟であれば、賃金の支払いを求めている労働者ということになります。訴訟代理人がついている訴訟の場合は、証拠調べでもなければ代理人のみが出頭していることが多いです。地方裁判所で代理人になれるのは弁護士のみ、簡易裁判所では弁護士と司法書士が代理人になっている可能性があるほか、当事者と関係の深い人(家族や従業員・役員)も許可をうけて代理人になることができます。

代理人のバッジ

弁護士と司法書士については所定のバッジをつけていることが多いです。弁護士のバッジは1円玉くらいの大きさの円形で、1円玉2枚くらいの厚みがありますので遠目でみても目立ちます。色は金色または銀色(メッキがとれて、地金が出てくると銀色に近づく)です。また、このバッジを見せるのを嫌うのかわざとバッジを裏返しにつけて座金をみせている人がいます。ずいぶん変わったことをするものですね。これは弁護士だと思って、ほぼまちがいありません。

司法書士のバッジは直径1センチ強、円形で薄く、外周が銀色です。見るからに小さいのですが、目がよければ傍聴席からでも見分けることができるかもしれません。

ただし、弁護士や司法書士でもバッジをつけずに出廷する人もいますから、バッジがないから本人だということはできません。むしろ、プロの訴訟代理人の場合は事務所所定の書式で事件の資料を袋やファイルに入れてあり、そのファイルに事件名・期日等を記入する欄を設けてあることが多く、それらしい資料の持ち方をしている人を探してみるのがよいでしょう。

また、傍聴席でも原告に近い立場の人達は原告席寄りに座っています。

被告またはその代理人(右側の席にいる人)

傍聴席からみて右側の席に座っています。被告は裁判を起こされた人になります。貸金請求訴訟だと、原告が貸金業者、被告がお金を借りた人という位置づけです。民事訴訟の場合は、あくまでも『単に裁判を起こされた』というだけですので、刑事訴訟の被告人とちがってなにか犯罪を犯した嫌疑がかかっているわけではありません。不当な訴訟で訴えられても、訴えられた以上は被告と呼ばれる決まりがある、というだけのことです。代理人については原告の項を参照してください。

被告の関係者が傍聴に来ている際には、被告席に近い傍聴席に座っているのは原告側と同じです。なお、両者に何の関係もない傍聴人が単に扉に近い席に座っているだけということもあります。

証人または証言をする人(正面で、こちらに背を向けている人)

傍聴席の正面すぐ近くに、ふだんの期日では使われない席と机があります。これは証人尋問や当事者尋問をする際に、証言をする人が座る席です。証言者は裁判官のほうを向いて座るため、傍聴席からは証言者の表情を知ることはできません。

ただし、傍聴席の隅に座れば証言者の表情が少しわかることもありますので、証人尋問の傍聴では証言者の背後ではなく傍聴席の隅のほうから法廷全体を見渡すのもよいでしょう。この場合、原告側の証人あるいは当事者に興味があるならば、それに対して反対尋問をする被告側代理人の挙動が見えやすい原告席側から傍聴するのがよく、被告側関係者に興味があるなら原告側代理人の挙動が見やすい被告側に席を構えて傍聴するのがよいです。

原告側の代理人が原告側の証人や当事者を尋問する際には、当然ながら十分な打ちあわせをしていることが多いため特に波乱無く終わるのに対し、原告側の証人に対して敵対的な立場から反対尋問する被告側代理人が『どんなところで反応するか』は観察の対象として興味深いことが多いため、証言者と敵対側代理人の表情を同時に見られる位置に着席したほうが観察していて面白いです。

傍聴人

訴訟の傍聴に来る人にも、いろいろな立場の人がいます。最近では中学〜高校生たちが班を組んで傍聴に送り込まれることも増えてきました。こうした、一種の社会勉強として来られる人達は訴訟に無関係なのですが、そうでない傍聴人もいます。

支援者または支援団体

労働関係の訴訟でたまに見かけます。市民団体やら労働組合から動員されてくる人達で、中には自分たち以外の傍聴人が法廷に訪れるのをひどく奇妙に思うひとがおり、扉を開けた瞬間に刺すような視線が飛んでくることがあります。もちろん無視していただければ結構ですので、離れて着席してください。どうせ彼らは、彼ら自身の世界の中に入りきっています。

簡単な見分け方として、その裁判の内容あるいは主張をまとめた資料をみんなで持っていること、目的の訴訟が終わればさっさと引き揚げてくれること、支援したい側に固まって座っていることがあります。

関係者の上級職制

これは労働関係の訴訟、しかも証拠調べでよく見かけます。証言者の上司にあたる人や会社の役員が、なかば監視を兼ねて傍聴に来るもので、一様に熱心にメモを取っています…が、複数人で来ても全員が同じようにメモを取っている、という不思議な人達です。

司法書士またはそれ以外の書類作成者

司法書士の場合は、地方裁判所に提出する書類は作成できますが代理人として出廷することはできません。訴訟の様子を知りたい場合、やむを得ず傍聴人になります。彼らは当事者が持っている訴状や準備書面の写しを持っていますので、わりとわかりやすいです。

司法書士ではないようでも、なぜか当事者と同じ裁判書類を持って傍聴中、という人を見たこともあります。本来やってはいけない裁判書類作成業務に手を出している人なのかもしれません。裁判官には「原告の知人です」と言ったのに、廊下にでた瞬間原告が傍聴人に「先生?」と話しかけているのを見たことがあります。こうした正体不明の関係者は、東京簡易裁判所のような大規模な裁判所でたまに見かけます。

次の事件の順番を待っている当事者

簡易裁判所の第一回期日で非常によく見かけます。同じ時間に数件から十数件の期日を設定して片っ端から処理していくためにやむを得ずこうなるのですが、この人達で傍聴席が一杯になっている場合には席の周りや後で立ってみていてもかまいません。

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Last Updated :2013-06-25  Copyright © 2013 Shintaro Suzuki Scrivener of Law. All Rights Reserved.