相談メモをください各分野共通 労働問題の相談の準備
「何が起きたか・何を聞きたいか」相談前に書いておきましょう
労働相談であれその他の紛争に関する法律相談であれ、相談したいことを紙に書いてあるのは相談担当者にとって大変ありがたいです。
A4判1枚か2枚の紙に、相談メモを作ってください。手書きでかまいません。
この相談メモに書いておいてほしいことは、大きく二つにわかれます。
一つは、労働相談が必要になった紛争の前から現在までに起きたことです。
もう一つは、その相談であなたが聞きたい・知りたいことです。
なにがあったのか労働相談に至る経緯 できれば時系列に沿って
相談メモではまず、労働相談までに起きたことがらを書き出してください。
できるだけ、起きた順番にしたがって古い出来事から順に、
- いつ頃
- 誰が
- 何を言った・何をした
これらの情報が箇条書きになっていると大変よいです。
労働相談ではセクハラや労災など、場所の要素が重要な一部の事案を除いて、いわゆる5W1Hを全部書くほど厳密である必要はありません。
たとえば零細企業で給料未払いにあったなら、労働相談の前にメモとして
相談メモの例 | |
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5月中旬 | 職安でA社の求人票をみて、職安の担当者を通じて紹介をうけた |
6月1日 | 入社面接。社長と面談し、採用を即決された |
6月7日 | A社で出勤開始。課長の下で事務作業をはじめるよう、社長から指示があった |
6月10日 | 課長所有の湯飲みを割った |
7月20日朝 | 給料日。月給20万円から、湯飲み代1万円が差し引かれた。 |
同日昼 | 上記の減給額は高くないか、課長に確認した。 |
同日夕方 | 社長に呼び出され、「文句があるなら辞めろ。今日辞めろ」と言われた。 |
翌日以降 | 出勤せず |
8月20日 | 7月分の給料が振り込まれていない。 会社に電話したが、電話に出てもらえない。 |
このくらいでかまいません。
自分が覚えていることを、覚えている範囲で書いてもらえればよいです。
上記の9行の説明がメモになっていれば、労働相談担当者が文字で読んだら10秒かからないはずです。これを相談中に全部話して説明しようとしたら、要領のいい人で2〜3分、人によっては10分以上かかるでしょう。
そんなはずはない、と決めつけるのはかんたんです。
それは、すでに相談事項が整理されているのを見たから言えるのです。
実際にはこの説明を2分で終えられる人より10分近くかける人のほうが多いというのが労働相談担当者としての筆者の経験です。
要領よく箇条書きにするのが大変なら、通常の文章形式でもかまいません。
その場合でもできるだけ時系列にそって、つまり古い出来事から順に新しい出来事を書き出していくようにしてください。
なにを知りたいのか相談担当者の立場上答えられないこともありますが
こちらは口頭で聞かれてもそう時間はかからないと思います。
それでも相談前に書き出しておいたほうがよいです。
なぜなら、労働相談の担当者は相談にきた人が何を知りたいか事前に把握しておくことで、補足で説明を求める内容を変えることがあるからです。
法律相談に近い労働相談、つまり法的手続きの勝ち負けに関心があるなら証拠=主に書類の有無と内容に重点を置くかもしれませんし、これから何をしたらいいかを一般的に知りたいなら事実関係を淡々と聞いていくことに時間を割いてよい、と考えるでしょう。
聞きたいことがあまりにも多いと最初から気づいたら、それらのいくつかを次回の相談にしたり追加で資料を持ってくるようはじめから断っておくこともできます。労働相談担当者によっては、相談したい人が気づかなかった問題点や可能性を指摘してくるかもしれません。
先に説明した零細企業の給料未払い問題の法律相談なら、
- 湯飲み一個割ったことに対して1万円を給料から差し引くことはできるのか
- 7月分の給料は払ってもらえないのか
- 払ってもらうには、どうしたらいいか
このようなかたちで質問を書き出しておけばよいでしょう。
ここで説明した相談メモが整っていれば、30分の相談であってもあと数個の質問に答えられますし、質問が上の3つしか書いていなくても
- 「7月20日に即時解雇されたようですが、解雇予告手当の請求は考えていないんですか?」
- 「いま他の会社には再就職できていますか?その前の会社で雇用保険には入っていましたか?」
といった問いかけが、労働相談担当者から出てくることも事務所によってはあるでしょう。
立場上、答えられないことも弁護士以外のすべての相談先で発生する問題です
もっとも、労働相談をする担当者によっては答えられない(答えてはいけないことになっている)ことも多々あります。
裁判所での手続き相談のように、少額訴訟や労働審判の制度は紹介するが会社側にも労働者側にも有利なことは答えられないとか、司法書士による法律相談は140万円を超える残業代請求についてはおこなえないという制限もありますので、相談で知りたいことを伝えたとたんに対応不能と言われるかもしれません。
これは相談機関の限界ですので、他の適切な相談先を聞いて労働相談を終えてください。