相続・遺言士業による関連サービスと費用
目次 かんたん!司法書士の選びかた
関連するサービスと費用相続に関する手続き
人の死亡に伴って士業の事務所が扱う手続きは、相続登記の他にもさまざまなサービスが提供されています。その一部は司法書士事務所が扱っていたり、他士業と連携して提供されることがあるので説明していきましょう。
預貯金の解約その他の財産調査
相続登記のほかにいくつかのサービスをパッケージングして提供している司法書士事務所が、実施することを売りにしています。相続登記に付随するサービスとしてではなく、遺言執行者の職務として行うこともあります。この調査そのものは、司法書士しかできない作業ではありません。
特別な権利や能力がなければできないものでもなく、個々の金融機関・証券会社・保険会社などに亡くなられた方(被相続人)の個人情報の開示請求をひたすら行う事務作業になります。これに先だって、存在が把握されている預金通帳の取引記録その他の書類から取引がありそうな金融機関の推測をする作業もあります。
煩雑ではありますが、相続人が自分でも可能なものです。報酬を表示している事務所では、1件あたり1000円から一案件あたり数万円までの設定があります。
この作業に1件数千円以上の費用を投じるのは、馬鹿げていると筆者は考えます。
現地調査
相続登記の対象になる不動産の現状を確認するため、現地や関係官公署で調査を行うものです。
これを行うことをアピールしている事務所は多くないのですが、業界団体が扱った苦情でこの業務に関するものがありました。つまり実施している司法書士事務所はある、ということになります。
一種の出張になるため、出張日当と同じ、つまり一日あたり最大数万円程度の報酬を要すると推測します。
家事調停(申立書類作成)
遺産分割を巡る話し合いが相続人達のあいだで成立しない場合に、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。この申立は弁護士が代理人としてできるほか、司法書士は家事調停申立書の作成・添付書類の収集を代行することができます。
司法書士は家事調停の代理人になれないため申立人は自分で裁判所に行かなければならない、という点は不便であり、短所とは言えます。しかし、ある程度対処能力がある人が申立人になる場合や、申立さえすれば落としどころが見えている(一部の相続人が強硬な対応をしており、それに根拠がない場合などの)状況では、弁護士と比べた場合の費用の安さが長所になります。弁護士とちがって、遺産の額に応じた成功報酬を設定しないからです。
司法書士からみて関心が高い分野=相続登記の登記申請書一式とは全然違う書類を作る仕事であるためか、相続登記を積極的に扱う司法書士事務所のウェブサイトでも遺産分割調停申立書まで作成するかどうか不明(報酬や受託可否の説明がない)ところはよく見かけます。
相続放棄
法定相続人は家庭裁判所に相続放棄の申述をすれば、被相続人の権利も義務も相続しないことができます。
つまり、亡くなった人に借金があっても無関係な立場になれる代わりに財産があっても相続できません。
相続放棄の申立は弁護士が扱うほかにも、申立書類の作成は司法書士事務所が扱っています。裁判書類の作成ではありますが誰かと争うタイプの手続きではなく申立書類作成の量も大きく変わりませんので、費用も一律(2万円台〜5万円程度)で提示されることが一般的です。
なかには相続放棄の熟慮期間である3ヶ月を超える事案についても扱うと標榜する事務所もあり、こちらの報酬は若干高く設定されています。
相続登記=財産がある人相手の仕事とは違う性質を持つ仕事ですので、相続登記を扱う事務所とは別に探したほうが見つけやすいでしょう。債務整理を主業務とする司法書士事務所も、相続放棄を借金問題の一部として扱います。
遺産分割協議の家事調停申立書類作成と違って、相続登記に積極的な司法書士事務所でも相続放棄の申立書作成の費用や説明は見かけます。調停のように面倒になる申立は扱いたくない、というわけではないはずですが、営業姿勢が垣間見えます。
その他、他士業の相続関連サービス
他士業しかできないサービスとして典型的なのは税理士による相続税の申告、弁護士による遺産分割の交渉や家事調停手続の代理です。このほか自動車の名義変更は行政書士が、遺族年金の裁定請求は社会保険労務士が行う業務になります。電話や水道の解約などの雑務は士業でなくてもできますが、これらを本人に代わって行う事務所もあります。
社会保険労務士以外の士業は、自分の事務所が窓口になって他士業と連携してワンストップサービスを提供することがありますが、必ずしも指定された士業の事務所に依頼する必要はありません。便利なのがよければ依頼と書類を丸投げして相応の費用を払えばよく、そうでなければ士業ごとに別に見積もりをとってみればよいでしょう。
このほか、死亡の原因が他の士業の業務に関わる場合、具体的には交通事故や労働災害などではその相談を受けた事務所が関連する相続関係手続きとその担当事務所を紹介してくれることもあります。最近では弁護士の事務所内に司法書士事務所が併設されていることがあります。弁護士に依頼した相続関係案件の登記は必然的にそこへ流れるのでしょうが、概して司法書士報酬は高めの設定です。