9.相談のツボ
労働者側では
・勝ったら取れるのか、よそから何かもらえるのか
(執行可能な財産の存在・雇用保険や未払い賃金立替払い事業の適用可否)
・さらに貧困に追いやらないために
(雇用保険の被保険者資格および離職理由・健保の任意継続被保険者または国保料の減免・国民年金保険料の納付免除等の確認)
労働側・使用者側に共通するものとして
・どんな事案でもとにかく労働時間をチェック
(予期せぬ請求額の増加=残業代請求の検討の必要性)
・戦うなら敵の気持ちになって、現状でどんなウソが有効か・可能かをひたすら考え、対策する
。 可能な対応策はなんでもやってくると仮定する。倫理観はひとまず棚上げすること。
使用者側として
労働者側代理人事務所のウェブサイトをチェック
金儲けのために労働者側の請求を煽る事務所であるか確認
(適当に=過払いの時とおなじように妥協してくれるのか?)
9.1.労働問題に取り組みたいが相談相手がいない場合(労働側で)
①倒産事案ではスピード勝負になるため、失敗が発生しやすい。
関与に際しては(失敗の可能性について)説明を丁寧に行うこと。
この分野については、依頼回避もやむを得ないが関わると実力が上がる。
②倒産事案でない場合には時効の可能性と強制執行に失敗する可能性をまず排除する
これらがクリアできれば、基本的にはある程度ゆっくり、時間をかけて対処できる
③資料調査にあたっては、なるべく次の根拠にたどり着くことを目指す
・法律または行政解釈・通達
・裁判例しかも勝訴で確定した事案
・裁判官・司法協会、厚労省の担当部署・関連法人の作成発行した書籍・雑誌記事
・弁護士の執筆にかかる書籍・記事で、労働法分野での執筆実績が豊富なもの
上記で複数の同趣旨の記載を発見できることが望ましい。
④小さいことをないがしろにしない。書式集に書いてあることになんとなく従わない
⑤依頼人についていって、裁判所以外の役所(労基署・年金事務所等)を見て回る
興味深いパンフレット(社会保険制度の紹介など)を発見したら遠慮無くもらう
⑥図書館やオンラインの判例検索サービスで適当なキーワードを入れて探してみる
能率は悪いが、さまざまな論理構成や言い回しに触れることができる。
読んでいるうちになんとなく力がついてくるはず。
⑦東京・大阪に出かける機会があったら、地裁で労働関係訴訟の記録を閲覧する
時間もお金もかかるが、効果絶大。書式集やふつうの研修教材に書いていない部分が見られるため
国会図書館の雑誌記事検索をつかって情報収集するのもよい。
⑧ためになる事案は友人と共有する
⑨上記の前提にたってとにかく受託し、ゆっくり時間をかけて仕事を進める
このコンテンツは平成25年10月に、業界団体で実施した研修の教材です。
司法書士の研修のために講師として作成していますので、一般の方に有用でないこともあります。
個別の問題については、有料の相談をお受けしています。