不動産の贈与・財産分与・親族間の売買司法書士の見積書 読み方・比べ方

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見積書を読んでみましょう(贈与・財産分与または知人間の売買)

贈与や財産分与の登記費用の見積書は、概ね三つの構成に分かれると思います。

  1. 所有権移転の登記に先立って必要な登記とその実費
  2. 所有権移転登記とその実費
  3. 付属する書類の準備や契約書作成とその実費・日当や通信費や交通費など

所有権移転登記に先だって必要な登記

所有権登記名義人住所(または、氏名)変更登記

 不動産を手放す人の現在の住所や氏名が、不動産の登記情報に記録されている住所や氏名と違っている際に必要になる登記申請です。
登記費用のうち、実費である登録免許税は不動産1個につき1千円かかります。土地1筆と建物1個からなる住宅であれば2千円です。

 司法書士の報酬は数千円から一万数千円までさまざまです。『所有権登記名義人住所変更登記 費用 (地域)』で検索してみるとよいでしょう。
当事務所では、不動産1個・変更箇所1ヶ所の場合5千円、土地1筆と建物1個の住宅であれば7千円です。

抵当権抹消登記

 不動産の現在の所有者が借りた住宅ローンなどを返し終わったときに必要な、抵当権の登記を消す登記です。

 抵当権以外にも、根抵当権・賃借権・仮登記・買戻特約などこの不動産の権利を制約する登記が別に残っていることが登記情報から読み取れて、それを消せる場合にはそうした権利や登記の抹消の登記が必要だという指摘を受けるかもしれません。

 抵当権抹消登記を2980円などの安値で行う事務所は、『抵当権抹消 司法書士 費用』などをキーワードとする検索結果に表示されるPPC広告で集客しています。多くは郵送だけで全国対応することを標榜しています。実際にその費用で済むかどうかは司法書士により異なり、広告を踏んだ先の説明をよく読むと他にさまざまな費用が上乗せされていることもあります。

 当事務所では、抵当権者が会社で不動産1個の場合7千円、土地1筆と建物1個の住宅であれば9千円です。

 抵当権抹消登記の費用のうち、実費である登録免許税は不動産1個につき1千円かかります。土地1筆と建物1個からなる住宅であれば2千円です。

 これらの登記費用は、実施の必要がなければ計上されませんし、あらかじめ別の事務所に依頼したり自分で申請することもできます。

所有権移転登記名義変更の手続きです

 事務所により、司法書士の報酬は1万円台から十数万円まで非常に大きな幅があります。

 当事務所では、契約書を作成する必要がない場合で不動産をゆずる人・ゆずり受ける人各1名、不動産一個で2万円、土地1筆と建物1個の住宅であれば2万2千円とするのが基本の見積もりです。とても安いというわけではなく、相続登記ではときおり他の司法書士事務所に見積もり負けを喫しています。

 実費である登録免許税は、贈与・財産分与の場合は評価証明書記載の価格の2%です。価格1千万円の不動産であれば20万円になります。登記費用として、実費のほうが大きな割合を占めてきます。

付属する書類の準備や契約書作成とその実費・日当や通信費や交通費など

 司法書士によっては所有権移転登記の費用に繰り込まれて計上しています。
各事務所で扱いに差がありすぎる部分ですので、登記費用の見積書を比較する場合はこの部分の報酬および実費と所有権移転登記の報酬および実費の総額を比べるしかないと考えます。

 参考までに当事務所の扱いを説明します。
 贈与契約書など、契約書を別に作成する場合は1ページにつき5千円で行います。何度も文案を書き換える可能性がある場合、1時間最大6千円のタイムチャージ制にすることもあります。

 役所で評価証明書などの書類収集を代行する場合、1ヶ所でおこなう最初の1件の申請について3千円、以後同一箇所で1件増加するごとに100円としています。

 法務局に提出するための登記原因証明情報の作成(契約書でなく、当事者の手元に残らないもの)は、ほとんどの場合に費用を請求していません。
このほか、登記申請を提出する法務局と申請までの期間によって2千円から1万2千円までの申請代理の報酬を加えています。名古屋市内での標準的な設定は3千円です。

 事務所を出てお客さま方に訪問したり遠方の法務局に申請に行く場合、日当や交通費を見積もりますが名古屋市内では日当と交通費を合計して3千円としています。
 通信費や雑費を請求することはなく、登記完了後の書類を郵送でお返しする場合にその実費を見積書に計上する程度です。

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ワンストップか分離発注か

 これは特に離婚・生前贈与・遺産の相続に関する手続きで問題になります。
 生前贈与であれば相続対策としての税理士、離婚であれば離婚調停や交渉の代理人となる弁護士が窓口となってさまざまな関連手続きの進行を統制し、不動産の登記はあくまでその計画の一環としてなされる、という場合もあります。いわゆるワンストップサービスを標榜する事務所です。

こうした事務所を利用していると、税理士や弁護士が指定する司法書士に半自動的に登記の依頼が振られるかもしれません。極端な場合には申請が済んでから登記費用の請求書が上がってきて、そうした報酬の支払についての合意がないということで紛争になった事例をみたことがあります。

 つまりワンストップサービスを提供する事務所では、住宅購入時に金融機関や不動産業者が依頼人の頭越しに司法書士を指定するのと同じような状況が発生する可能性があります。もちろん手続き全体との整合性や情報のやりとりという面では、ワンストップサービスの提供者が指定する司法書士のほうがよく状況を把握しているはずです。登記費用がいくらになるかを含めて何も考えたくなければそのままお任せすればよく、そうでなければ手続きごとに説明をうけ、自分で誰に依頼するかを決めればよいのです。この場合もまずその事務所で指定の司法書士から見積書をとってみたいのですが、競合になるとわかったとたんに見積書の発行から拒否する士業もいます。ムダなことはしない、という点でわかりやすい対応ですので、深追いすべきではありません。

 たいていの場合、不動産登記は税理士や弁護士が仕切ったプロジェクトの終盤、あるいは一区切りをつける段階でなされます。依頼する司法書士の選定に何日か時間をかけたり費用を理由に別の司法書士の利用を希望しても計画の成否に影響をおよぼすことはないはずです。

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