11.参考文献・資料
11.1.労働法全般
働く人の法律入門第2版 西村健一郎 有斐閣(2009)
労働法をはじめとして社会保険諸法令・税法上の記述を含む。労働問題に興味がある人の最初の一冊に好適。
真島式社労士試験入門講座 真島伸一郎 経営書院(ほぼ毎年発行)
労働法やら健康保険制度がなぜこの世にあるのか?といったレベルからの解説で、労働社会保険諸法令全般のつながりをなんとなくわかった気分にさせてくれる一冊。
働く人の法律入門よりさらに平易なので、一度読んでおくとよい。
問題解決労働法1~12 旬報社(2008~2009)
同一傾向の分冊化された類書多数。内容は使用者寄り・労働者寄りで微妙に異なる。
このシリーズは労働者寄りの内容である。これが図書館から借り出せる環境下で『労働事件審理ノート』『労働関係訴訟』のいずれかを持っていれば、非力な講師の研修を受けるよりよほどよい。
個別労働紛争解決の法律実務 ほか 石嵜信憲 中央経済社
上記のほか、同じ著者・出版者・装丁で労働法分野の著書多数。すべて『~の法律実務』という表題。
詳しい・分厚い・重い。困ったときにこの本にたどり着くことが多い。
労働時間・休日・休暇の法律実務 ほか 安西 愈 中央経済社
上記のほか、同じ著者・出版者・装丁で労働法分野の著書がある。こちらも『~の法律実務』という表題。
傾向は石嵜著の法律実務と似て、詳しい・分厚い・重い。さらに、文字が小さい。
労働時間の設定をめぐって中小企業にありそうな問題への処理方針は探せばほとんど見つけ出せるが、探すのがたいへん。
11.2.労働訴訟
労働事件審理ノート 改訂版 山口幸雄 判例タイムズ社(2011)
労働訴訟の各請求類型について、裁判官の立場から要件事実・予想される抗弁や争点・訴訟運営上の留意点を記した、有名な本。
労働関係訴訟 渡辺弘 青林書院 (2010)
リーガル・プログレッシブ・シリーズの一冊で、著者は裁判官。労働事件審理ノートと傾向はおなじだが、こちらには労災・労働組合関係の訴訟の記述があり、そのぶん分厚い。値段も高い。
労働事件審理ノートか本書か、どちらか手元に一冊あるとよい。
労働関係訴訟の実務 白石哲ほか 商事法務(2012)
裁判実務シリーズの一冊。東京地裁労働部に勤務したことがある多数の裁判官が、30講の問題別に執筆するスタイルをとる。
主張立証の留意点を労働者側・使用者側で説明している点が特徴。
ぴったりの論点がある場合に参考になるが、訴訟全体の流れについて記載が少ない点で上記二冊と傾向が違う。 説明しているというより、訴訟運営に関する裁判所側から当事者たちへの要望なのかもしれない点でも興味深い。
労働基準法解釈総覧改訂14版 厚生労働省労働基準局労働調査会(2011)
管轄官庁による、条文ごとの法解釈の解説。法解釈もさることながら、条文に関連するさらに細かい通達への手がかりとして調べるのにも使う。
労基法を扱う訴訟で迷ったときには必ず手にする一冊。
11.3.その他特定の局面で有用なもの
労働審判実践マニュアル 日本労働弁護団(2007)
労働審判に絞った申し立て例・書式が集中的に掲載されている。
ケーススタディ労働審判 東京弁護士会労働法制特別委員会 法律情報出版(2010)
労働審判の期日における裁判所-当事者間のやりとりの流れが複数掲載されている点が貴重。期日の進み方を説明するのに使える。
実際には、この本に書いてあるほど期日で代理人がしゃべることはない。
倒産対策実践マニュアル 日本労働弁護団(2006)
会社の倒産時に従業員側から何が出来るかを解説する本。類書がない。
給与明細で騙されるな 北村省吾 朝日新聞出版(2011)
まさに給与明細のみから労働条件の問題点を抽出しようとしている本。
法律相談実施前に、給与明細の書類を送ってもらった際の事前検討に最適。
社会保険・労働保険・人事労務の事務手続 清文社 五十嵐秀樹(毎年発行)
司法書士にとっては疎遠な雇用保険・社会保険の手続きや書式を解説した本。
本書は手続きの通し方より制度の説明が充実しているために推奨する。
新・労働法実務相談 労務行政(ほぼ毎年発行)
労働相談がQ&A方式で掲載され、ここ数年は毎年発行されている。
同様の書籍は多数あるが、本書は内容が毎年更新されると期待できるため推奨する。
割増賃金計算の実務必携 日労研(2005)
少し古いが、週40時間・1日8時間という規制の意味や月給制労働者の残業代の算出方法について懇切丁寧に解説している本。
情報公開・開示マニュアル 東京第二弁護士会 ぎょうせい(2008)
訴訟に際して必要な証拠収集のために情報公開制度をどう使うか、を解説した本。
未払賃金立替払制度実務ハンドブック 吉田清弘ほか きんざい(2013)
未払賃金立替払制度について、破産申立代理人・管財人弁護士を対象に解説した本。非常に詳しい。類書がない。
労働審判制度をめぐる当事者の語り:労働審判制度利用者インタビュー調査記録集 東大社会科学研究所(2013)
非売品。書店への流通・図書館への所蔵を期待できないが、国会図書館で閲覧可。
労働審判利用者へのインタビュー内容を労働者側・使用者側二十数件収録。
利用者からみた裁判官・代理人・敵対当事者・労働審判制度の印象が読み取れる点で、とても貴重。
講師から、最後に一言
本書は労働紛争に真剣にとりくんでみたい方に、特におすすめします。依頼人から直接聞けないような語りの数々に、きっと考えさせられるところがあるはずです。
このコンテンツは平成25年10月に、業界団体で実施した研修の教材です。
司法書士の研修のために講師として作成していますので、一般の方に有用でないこともあります。
個別の問題については、有料の相談をお受けしています。