自筆証書遺言の法務局による保管制度(本文99ページ)
概要
自筆証書遺言を、国の行政機関である法務局が保管する制度ができました。
本書刊行以降に法律ができたため、本文99ページの記載に以下の変更が生じます。
変更箇所:本文99ページ
変更前
自筆の遺言は相続開始後に家庭裁判所で『検認』を受ける必要があります。
変更後
自筆の遺言は通常、相続開始後に家庭裁判所で『検認』を受ける必要があります。
令和2年7月から、法務局に自筆証書遺言を保管してもらうことで、この検認の申し立てが不要になる制度が始まりました。
説明
従来は自筆証書遺言は遺言者やその遺言で利益を受ける人が保管しておく必要があり、なくしたり改ざんされる等の危険がありました。令和2年7月10日から、各地の法務局で自筆証書遺言の保管のみをおこなう制度が始まっています。保管の手数料は1件3900円となりました。
この制度を利用した場合、自分が相続人や遺言執行者になる遺言が保管されている事実は全国どの法務局でも検索・証明が可能になります。また、この制度を利用した遺言は被相続人死亡後に家庭裁判所への検認の申し立てをする必要がない点に大きな長所があります。
ただし、この制度によって遺言者の死亡後に相続人の1人が法務局で手続きをした場合、ほかの相続人にも遺言書が保管されていることが知られるようになっています。この点が公正証書遺言との違いです。
相談室から補足
この制度の利用により、従来なら公正証書遺言を作らなければ実現できなかった以下のことが自筆証書遺言でも可能になります。
- 遺言者の死亡後、家庭裁判所への検認の申立てが不要になる
- 遺言書の保管について、全国で検索できる
一方、相続人が法務局に遺言書保管に関連する手続きをとった時点で、他の相続人にも遺言書の保管の事実が通知されます。つまり、他の相続人に全く知られないようにして遺言の内容を実現することはできません。この点は公正証書遺言に比べて劣ります。
しかし、費用対効果の観点から当相談室では今後、自筆証書遺言の法務局による保管制度の利用を大いに推奨します。