自筆証書遺言でワープロが使える場合(本文94〜98ページ)
概要
本文94〜98ページでは、遺言をする人が自分で遺言書を書いて作る『自筆証書遺言』について説明しています。
自筆証書遺言は従来、書面の全部を手書きする必要がありました。
平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言では、財産目録をパソコン・ワープロで作成できることになりました。
相談室から補足
財産目録をワープロで作成する場合、まず相続人ごとに相続させたい財産をまとめて財産目録を作成するのがよいでしょう。
相続人AさんとBさんがいる場合を説明します。
相続人Aに相続させたい銀行預金1件、土地建物各1件を財産目録1に記載し、別の紙には相続人Bに相続させたい農地3筆、山林4筆を記載して財産目録2とします。
そのうえで、遺言書の本文は手書きで『遺言者は、妻Aに財産目録1の財産を相続させる。長男Bに財産目録2の財産を相続させる。』などと記載することになります。
こうすると、相続させたい財産はワープロで記載し、本文の手書きを最小限にして自筆証書遺言を作れることになります。
財産目録に記載できるのは林地を含む土地建物等の不動産、預貯金有価証券等の金融資産、森林組合の出資持分やゴルフ会員権などの権利、貴金属などの動産や自動車など、財産として特定できる物や権利であれば制限はありません。
このため、多数筆の林地その他の財産を持っている人が相続人ごとに相続させる財産を細かく指定したい場合に有用な改正になっています。
財産目録をワープロで作る場合の書式例追加
本文95ページの自筆証書遺言の書式例@Aは従来通り使えます。
ここでは、財産目録を利用する場合の例を追加します。
内容は、本文95ページの長男に土地2筆を相続させる書式例Aに妻が相続する住宅(土地と建物)と預金1件を加える想定です。
自筆証書遺言の書式例B
遺言書
わたしは、次のとおり遺言する。
長男の甲野一郎(昭和50年2月1日生)に、財産目録1記載の財産を相続させる。
妻の甲野花子(昭和32年4月6日生)に、財産目録2記載の財産を相続させる。
令和2年6月1日
○○市新町1丁目2番地
甲野太郎(印)【1】
財産目録の記載例
財産目録1
1.○○市元山字前ノ谷 345番 の土地
2.○○市元山字前ノ谷 346番1 の土地
甲野太郎(印)
財産目録2
1.○○市新町1丁目2番 の土地
2.○○市新町1丁目2番地 家屋番号 2番 の建物
3.△△銀行○○支店 普通預金 口座番号 2345678 の預金
甲野太郎(印)
財産目録をワープロで作成する自筆証書遺言の注意事項追加
本文97ページ
『自筆証書遺言 共通の注意事項』を次のとおり読み替えてください。
1.財産目録以外の本文は自分1人で書きます。本文については、ワープロは認められません。
この書式例では、『遺言書』という表題から【1】の『甲野太郎』までを甲野太郎自身が手書きします。【1】という文字は説明のためつけたもので、書き写す必要はありません。
さらに、財産目録1、財産目録2の『甲野太郎』の署名も甲野太郎自身が手書きし、その横に本文とおなじ印鑑で捺印します。
注意事項2〜9は変更ありません。注意事項10として、以下を追加します。
追加
10.「自筆証書遺言」のうち、財産目録のページはワープロで作成できます。遺言書の本文は、従来どおり自筆が必須です。本文も手書きできない場合は、公正証書遺言の作成を検討してください。
本文98ページ
『自筆証書遺言の作成 チェックリスト』を次のとおり読み替えてください。
変更前
□ ぜんぶ自分で手書きしましたか?
変更後
□ 財産目録ではないページは、ぜんぶ自分で手書きしましたか?
※財産目録はワープロで作れますが、署名は自筆でする必要があります
本文98ページチェックリストの他の箇所は変更ありません。