工場勤務
平成12年夏。今年の夏休みは、すばらしいことに1週間しかなかった。
今の職場は、お馬鹿な行政書士事務所と比べればかなり天国に近い。なにしろサービス残業がない。もうそれだけで十分だ。勤め先が偽装請負業者であることは、このさい関係ないことにする。
夕方5時すぎから午前1時半すぎまで、指の先ほどのスイッチの検査をするのが新しいぼくの仕事だ。だます必要もごまかす必要もない。直接の雇用関係がある、偽装請負業者そのものは、かなり怪しいが…自分が怪しいことをさせられない限り、ここでお金を貯めることに専念するつもりだ。所定労働時間が深夜にかかるとはいえ、砂上事務所より給料がいいというのがちょっと切ない気もするけれど。残業手当が1650円、てのがすごいよ!1000円のクソ行政書士事務所とはおとなと子どもの違いだ。
この工場はエアコンの部品を造っているので梅雨入り前の繁忙期がすぎれば、冬になるまで時間外労働はない。ぼくが断続的に労働法の勉強をはじめた直接のきっかけは、砂上事務所をはなれた直後の平成12年3月、短期の申請を手伝うために働きだした芦葉事務所で、また奴の勝手な都合でクビになったからだ。
適切なタイミングで内容証明を打ったこともあって最低限の金額は回収できたとはいえ、一人のじいさんに2度まで契約を反古にされたうえ、こちらの賃金請求に「4月は払いが多くてよ、使ってまった。ハッハッハ!」と笑い飛ばされた印象はまことに強烈だった。思えばこの一言が、半年後に彼への訴訟を起こすきっかけになるのだが。
新しい出会いもあった。その後平成12年4月から、このちょっと怪しい偽装請負業者に落ち着くことになったのだが、そこでも「前職を解雇されて、労働基準監督署経由で交渉中」という人がいた。最終的には簡易裁判所への支払督促の申し立てをぼくが支援したことで解決につながったのだが、痛感させられたのだ。
どうもぼくは働くことに関する法律にうとい。というより、無知でありすぎる。だからあんな連中にいいようにされても、結局は辞める以外どうにもできなかった、おかしいし悔しいよ…
それにぼくが知恵を貸した彼だって、支払督促の異議がでて通常訴訟へ移行した和解交渉の席で、堂々と申し立て費用まで取ってきたというじゃないか…
確かにぼくは書類を作って助けたけど、最終的に自分の事案を解決したのは他でもない、それまでは普通に働いてきた、ぼくより少し年下の普通の人じゃないか?彼の方が、今のぼくよりずっとスゴイ。偉い。
もともと誰もがそんな風に、自分の権利を守って戦うことを助けられるようになりたい、というのが司法書士を目指した理由なんじゃなかったっけ?確かにそうだ。
じゃあここへ来るまでの自分は? 丁稚でした。ただの!
それでいいのか?
よくない!やっぱりよくない!
断続的な勉強は、こうして継続的な勉強になった。なにしろ今は、お金を貯める前にクビになって作った借金を返さなければならない段階だ。今の職場は働く時間とそうでない時間がちゃんと別れているから、時間はいくらでもあった。
このコンテンツは、ブラックな零細企業の残業代不払いと本人訴訟の体験談です
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